はじめに
せっかく資格を取るわけですから、最大限有効活用したいところです。
早く合格したい・・・。
合格したらどうするん?
そういえば・・・。今一つイメージできてないかも。
それをイメージしておくのもいいんじゃないでしょうか♪
はじめに

「先生、乙四に合格したら、それで終わりですよね?」
試験日が近づいてくると、多くの学習者の頭の中は「合格」の二文字でいっぱいになります。
過去問で何点取れたか。
苦手分野を克服できたか。
あと何日勉強できるか。
合格ラインへ届いているか。
当然のことです。
資格試験を受ける以上、まず合格しなければ資格は取得できません。
しかし、資格勉強を「試験に合格するためだけの勉強」と考えてしまうと、大切なものを見落としてしまうことがあります。
本当は、資格取得の先にも道が続いているからです。
資格を仕事で使う。
転職の選択肢を増やす。
今の仕事と組み合わせる。
関連する知識を学ぶ。
次の資格へ挑戦する。
あるいは、
「自分でも勉強すれば結果を出せる」
という経験を、次の挑戦へつなげる。
資格取得は、一つのゴールであると同時に、新しいスタート地点にもなります。
今回は、乙四試験を目前にした学習者と講師の会話から、「合格したあと」の未来について考えていきます。
「合格したあと」のことを何も考えていなかった
ある日の夕方。
学習者は過去問題集を閉じると、大きく息を吐きました。
🔴 学習者
「終わりました。」
🔵 講師
「どうでした?」
🔴 学習者
「前よりかなり解けるようになりました。」
🔵 講師
「正解率は?」
🔴 学習者
「今回は8割くらいです。」
🔵 講師
「最初のころと比べると?」
🔴 学習者
「全然違います。」
学習者は少しうれしそうに、最初のころの記録を開きました。
🔴 学習者
「最初は問題を読んでも、何を聞かれているのか分からないものが多かったです。」
🔵 講師
「法令の数字も苦労していましたね。」
🔴 学習者
「何度覚えても混ざっていました。」
🔵 講師
「物理・化学は?」
🔴 学習者
「一番嫌いでした。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「まだ得意とは言えませんけど、前ほど怖くないです。」
🔵 講師
「試験まであとどのくらいですか?」
🔴 学習者
「もうすぐです。」
🔵 講師
「では、合格したら何をします?」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「乙四に合格したあとです。」
🔴 学習者
「……何をする?」
学習者は少し考えました。
🔴 学習者
「特に考えていませんでした。」
🔵 講師
「そうなんですか?」
🔴 学習者
「だって、今は合格することで頭がいっぱいです。」
🔵 講師
「それはそうですね。」
🔴 学習者
「合格したら、とりあえず勉強しなくてよくなるな、と。」
🔵 講師
「なるほど。」
🔴 学習者
「先生、資格って合格するために取るんじゃないんですか?」
🔵 講師
「では、なぜ乙四を受けようと思ったんでしょう。」
🔴 学習者
「なぜ……。」
学習者は少し黙りました。
🔴 学習者
「最初は、何か資格を持っておいた方がいいと思ったからです。」
🔵 講師
「なぜ資格を持っておきたいと思ったんですか?」
🔴 学習者
「将来が少し不安だったんです。」
🔵 講師
「仕事のことですか?」
🔴 学習者
「はい。」
🔴 学習者
「今すぐ転職したいわけではありません。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「でも、この先ずっと今と同じ仕事をしているか分からないじゃないですか。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「もし転職することになったとき、何も持っていないより資格があった方がいいかなと思って。」
🔵 講師
「それなら、乙四に合格したところで終わりでしょうか?」
🔴 学習者
「……違いますね。」
🔵 講師
「資格を取ったあとに、その資格をどう使うかを考える必要があります。」
🔴 学習者
「確かに。」
🔴 学習者
「でも、乙四を取ったら実際に何が変わるんでしょう?」
🔵 講師
「それを調べてみるところから始めましょう。」
🔴 学習者
「今からですか?」
🔵 講師
「今すぐ転職活動をするわけではありません。資格取得後の選択肢を知っておくんです。」
講師はノートを開き、真ん中に大きく、
「乙四取得後」
と書きました。
そこから線を何本か伸ばします。
今の仕事で活用
転職・就職
関連する仕事を知る
次の資格
知識を深める
🔴 学習者
「こんなに考え方があるんですね。」
🔵 講師
「ほかにもあるでしょう。」
🔴 学習者
「自分は『合格』しか見ていませんでした。」
🔵 講師
「もちろん、まずは合格を目指します。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「でも資格は、取得した瞬間に自動的に何かを変えてくれるものではありません。」
🔴 学習者
「持っているだけではダメ?」
🔵 講師
「持っていること自体に意味がある場面もあります。ただ、それをどう活用するかで、その後の広がりは変わります。」
🔴 学習者
「資格を取れば、仕事がどんどん来るわけじゃないですもんね。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「転職できることが保証されるわけでもない。」
🔵 講師
「だからこそ、『資格+何があるか』を考えます。」
🔴 学習者
「資格プラス何か?」
🔵 講師
「今までの仕事の経験です。」
🔴 学習者
「ああ。」
🔵 講師
「社会人には、資格を取る前から積み重ねてきたものがあります。」
🔴 学習者
「自分では普通だと思っている仕事の経験も?」
🔵 講師
「もちろんです。」
🔵 講師
「例えば、人と接する仕事をしてきた。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「現場で働いてきた。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「安全確認をする仕事を経験してきた。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「後輩へ仕事を教えたことがある。」
🔴 学習者
「あります。」
🔵 講師
「それらも全部経験です。」
🔴 学習者
「資格だけを見るんじゃなくて、自分が今までやってきたことと組み合わせるんですね。」
🔵 講師
「そうです。」
学習者はノートに、
自分の経験+乙四
と書きました。
🔴 学習者
「こう考えたことはなかったです。」
🔵 講師
「資格取得は、今までの自分を全部リセットして別の人になることではありません。」
🔴 学習者
「今までの経験に一つ追加する。」
🔵 講師
「そのイメージに近いですね。」
資格を取った自分の「1年後」を考えてみる
🔵 講師
「では、一つ想像してみましょう。」
🔴 学習者
「何をですか?」
🔵 講師
「乙四に合格してから1年後です。」
🔴 学習者
「1年後?」
🔵 講師
「そのとき、どうなっていたら『乙四を取ってよかった』と思いますか?」
学習者は腕を組んで考えました。
🔴 学習者
「難しいですね。」
🔵 講師
「何でもいいですよ。」
🔴 学習者
「給料が上がっていたらうれしいです。」
🔵 講師
「いいですね。」
🔴 学習者
「仕事の選択肢が増えていたら、それもうれしいです。」
🔵 講師
「ほかには?」
🔴 学習者
「今より仕事に関する知識が増えていたら。」
🔵 講師
「では、それを書いてみましょう。」
学習者はノートに書きました。
1年後
・仕事の選択肢が増えている
・資格を仕事に生かせる方法を知っている
・今より知識が増えている
🔴 学習者
「こんな感じですか?」
🔵 講師
「十分です。」
🔵 講師
「では、その状態になるために、合格直後に何をすればいいでしょう。」
🔴 学習者
「うーん……。」
🔵 講師
「例えば求人を見てみる。」
🔴 学習者
「転職する気がなくてもですか?」
🔵 講師
「構いません。」
🔴 学習者
「何を見るんです?」
🔵 講師
「乙四がどのような仕事で求められているか。」
🔴 学習者
「なるほど。」
🔵 講師
「資格だけでいいのか、ほかに経験や資格が必要なのか。」
🔴 学習者
「それも分かりますね。」
🔵 講師
「給与や勤務条件だけでなく、仕事内容を見ることも大切です。」
🔴 学習者
「求人って、応募するためだけに見るものだと思っていました。」
🔵 講師
「自分の資格が社会でどう使われているか調べる資料にもなります。」
🔴 学習者
「それは面白そうですね。」
🔵 講師
「そこで、もし何度も出てくる別の資格があったら?」
🔴 学習者
「次に取る資格の候補になる?」
🔵 講師
「そう考えることもできます。」
🔴 学習者
「先生、資格を一つ取ったら、次々資格を取った方がいいんですか?」
🔵 講師
「必ずしもそうではありません。」
🔴 学習者
「そうなんですか?」
🔵 講師
「資格を増やすこと自体が目的になってしまうことがあります。」
🔴 学習者
「資格コレクターみたいな感じですか?」
🔵 講師
「資格をたくさん取ること自体が悪いわけではありません。でも、自分の目的とのつながりは考えたいですね。」
🔴 学習者
「仕事に必要なのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「今持っている資格と組み合わせられるのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「自分が本当に学びたいのか。」
🔵 講師
「そうです。」
🔴 学習者
「乙四に合格した勢いで、関係ない資格まで次々申し込む必要はないんですね。」
🔵 講師
「次の目的を決めてからでいいでしょう。」
学習者は少し考えてから言いました。
🔴 学習者
「でも、自分は乙四に合格できたら、別の資格にも挑戦してみたいです。」
🔵 講師
「なぜですか?」
🔴 学習者
「勉強することへの抵抗が、前より減ったからです。」
🔵 講師
「最初はどうでした?」
🔴 学習者
「社会人になってから勉強なんて無理だと思っていました。」
🔵 講師
「参考書を開いたときは?」
🔴 学習者
「分からない言葉ばかりで、やめようかと思いました。」
🔵 講師
「過去問は?」
🔴 学習者
「全然解けませんでした。」
🔵 講師
「それが今は?」
🔴 学習者
「8割くらい取れることがあります。」
🔵 講師
「資格勉強で身についたのは、乙四の知識だけでしょうか。」
🔴 学習者
「違いますね。」
🔵 講師
「何が残りました?」
🔴 学習者
「勉強時間の作り方。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「過去問の使い方。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「間違えた問題の復習方法。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「ChatGPTの使い方も覚えました。」
🔵 講師
「ほかには?」
学習者は少し考えました。
🔴 学習者
「分からなくても、何回かやれば分かるようになるってことです。」
🔵 講師
「それは大きいですね。」
🔴 学習者
「学生のころは、一回分からないと『自分はこの教科が苦手』と思っていました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「一回で分からなくても普通だと思えるようになりました。」
🔵 講師
「なぜでしょう。」
🔴 学習者
「乙四で何度も経験したからです。」
🔴 学習者
「最初は法令の数字なんて覚えられないと思いました。」
🔵 講師
「でも?」
🔴 学習者
「何度も問題を解いたら覚えました。」
🔵 講師
「物理・化学は?」
🔴 学習者
「最初は意味が分からなかったけど、簡単なところからやったら少しずつ分かりました。」
🔵 講師
「その経験は、次の資格でも使えます。」
🔴 学習者
「そうですよね。」
🔵 講師
「参考書が違っても、試験が違っても、学習の進め方には共通する部分があります。」
🔴 学習者
「つまり、一つ目の資格が一番大変なのかもしれませんね。」
🔵 講師
「そう感じる人はいるでしょう。自分に合った勉強方法がまだ分からないからです。」
🔴 学習者
「次は、最初から過去問を早めに見ます。」
🔵 講師
「今回の経験ですね。」
🔴 学習者
「参考書を全部完璧にしてから問題集へ行こうとはしません。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「忙しい日は5分でもやります。」
🔵 講師
「それも経験から得た方法ですね。」
🔴 学習者
「AIにも、分からないところを説明してもらいます。」
🔵 講師
「そう考えると、乙四取得後に残るものは?」
🔴 学習者
「資格だけじゃないですね。」
🔵 講師
「何が残ります?」
🔴 学習者
「自分なりの勉強方法が残ります。」
学習者はノートに書きました。
乙四で得るもの
・資格
・危険物の知識
・勉強習慣
・過去問の使い方
・時間の作り方
・AIの活用方法
・「勉強すればできる」という経験
🔴 学習者
「こうやって書くと、結構ありますね。」
🔵 講師
「資格証に書かれているものだけが成果ではありません。」
🔴 学習者
「先生、AIがもっと便利になったら、資格って意味がなくなるんでしょうか?」
🔵 講師
「なぜそう思います?」
🔴 学習者
「分からないことをAIに聞けば教えてくれるじゃないですか。」
🔵 講師
「では、何も知らなくても全部AIへ任せればいいでしょうか。」
🔴 学習者
「それは少し怖いですね。」
🔵 講師
「AIの答えが正しいかどうか、どう判断します?」
🔴 学習者
「ある程度、自分にも知識が必要です。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「資格勉強で基礎を持っているから、AIも使いやすくなる。」
🔵 講師
「そういう考え方もできます。」
🔴 学習者
「じゃあ、AIと資格はどちらか一つじゃないんですね。」
🔵 講師
「資格で基礎を学び、AIを道具として使うこともできます。」
🔴 学習者
「資格を取ったあともAIで勉強できますしね。」
🔵 講師
「分からない用語を整理したり、復習問題を作ったりできます。」
🔴 学習者
「ただ、AIの答えを全部信じるのはダメ。」
🔵 講師
「特に仕事上の重要な判断や法令などは、公式情報を確認する必要があります。」
🔴 学習者
「資格を持っているからこそ、『ここは確認した方がいい』と気づけることもありそうですね。」
🔵 講師
「基礎知識を持つ意味の一つですね。」
講師は、最初に書いた
「乙四取得後」
という文字を指しました。
🔵 講師
「では、合格したあと最初に何をします?」
🔴 学習者
「まず求人を見てみます。」
🔵 講師
「応募しますか?」
🔴 学習者
「まだ分かりません。まず、どんな仕事で乙四が使われているか調べます。」
🔵 講師
「その次は?」
🔴 学習者
「今の仕事で生かせる可能性も考えます。」
🔵 講師
「さらに?」
🔴 学習者
「関連する資格も調べます。ただし、すぐ申し込まず、本当に必要か考えます。」
🔵 講師
「1年後は?」
🔴 学習者
「今より選択肢が増えていたらいいですね。」
🔵 講師
「転職していなくても?」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「なぜですか?」
🔴 学習者
「『今の仕事しかできない』と思っているのと、『こういう仕事もある』と知っているのでは、全然違うと思うからです。」
学習者はノートの新しいページを開きました。
そして、一番上に、
資格取得後の1年間
と書きました。
その下に、
合格直後
3か月後
半年後
1年後
と四つの欄を作ります。
🔴 学習者
「ここに何をするか書いてみてもいいですか?」
🔵 講師
「もちろんです。」
🔴 学習者
「合格直後は、乙四を使える仕事を調べる。」
🔵 講師
「いいですね。」
🔴 学習者
「3か月後は……。」
学習者の手が止まりました。
🔴 学習者
「ここから先は、まだよく分からないですね。」
🔵 講師
「今、全部決める必要はありません。」
🔴 学習者
「そうなんですか?」
🔵 講師
「まず資格を取って、調べて、そこで見つかった情報から次を決めればいいんです。」
🔴 学習者
「ロードマップと同じですね。」
🔵 講師
「どういう意味ですか?」
🔴 学習者
「最初から一年後まで完璧に決める必要はない。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「今の自分に分かるところまで決めて、進んだらまた考える。」
🔵 講師
「その方が現実的です。」
学習者は、
3か月後
の欄に、
「調べた結果から次の行動を一つ決める」
と書きました。
🔴 学習者
「これならいいですか?」
🔵 講師
「いいと思います。」
🔴 学習者
「半年後と一年後は?」
🔵 講師
「今は空白でも構いません。」
🔴 学習者
「空白?」
🔵 講師
「未来には、まだ分からないことがありますから。」
🔴 学習者
「資格を取ったら、すぐ次の人生設計まで全部決めないといけないと思っていました。」
🔵 講師
「そんな必要はありません。」
🔴 学習者
「一歩だけ決めればいい?」
🔵 講師
「まずはそれで十分です。」
学習者はノートを見ながら、少し笑いました。
🔴 学習者
「試験に合格したら、全部終わると思っていました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「合格したら、そこから使い方を考えるんですね。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「資格を取るところまでが勉強で、そのあとが人生での使い方。」
🔵 講師
「いい考え方ですね。」
🔴 学習者
「なんだか、試験に合格する意味が少し変わってきました。」
🔵 講師
「どう変わりました?」
🔴 学習者
「前は、合格通知をもらうことだけが目的でした。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「合格通知をもらったあと、自分が何をするかの方が大事なのかもしれないと思っています。」
学習者は、ノートの最後に一行書き加えました。
「資格を取ることをゴールにしない。資格を取った自分が、次に何をするかを考える。」
そして、そのページをしばらく眺めていました。
合格しただけでは、何も変わらないのではないか
試験当日。
学習者は、これまで何度も解いてきた問題を思い出しながら、一問ずつ慎重に解いていきました。
分からない問題があっても、そこで止まりません。
取れる問題から取る。
迷った問題には印をつけ、あとから戻る。
これまで練習してきた方法を、そのまま実行しました。
そして数週間後。
結果が発表されました。
🔴 学習者
「先生。」
🔵 講師
「どうでした?」
🔴 学習者
「合格しました。」
🔵 講師
「おめでとうございます。」
🔴 学習者
「ありがとうございます。」
学習者は笑っていました。
しかし、少し不思議そうな表情もしています。
🔵 講師
「どうしました?」
🔴 学習者
「いや……。」
🔵 講師
「何か気になりますか?」
🔴 学習者
「合格したら、もっと何かが変わると思っていました。」
🔵 講師
「何が変わると思っていたんですか?」
🔴 学習者
「よく分からないんですけど……。」
少し考えてから、学習者は言いました。
🔴 学習者
「人生が一気に変わるというか。」
🔵 講師
「今日、仕事は変わりました?」
🔴 学習者
「変わっていません。」
🔵 講師
「給料は?」
🔴 学習者
「変わっていません。」
🔵 講師
「生活は?」
🔴 学習者
「昨日と同じです。」
🔴 学習者
「なんか、ちょっと拍子抜けしました。」
🔵 講師
「資格を取った瞬間に、すべてが自動的に変わるわけではありませんからね。」
🔴 学習者
「そうですよね。」
🔵 講師
「でも、本当に何も変わっていないでしょうか。」
🔴 学習者
「え?」
🔵 講師
「数か月前の自分と比べてみましょう。」
🔴 学習者
「数か月前……。」
🔵 講師
「乙四の参考書を最初に開いたころです。」
🔴 学習者
「あのころは、本当に何も分かりませんでした。」
🔵 講師
「法令は?」
🔴 学習者
「数字ばかりで嫌になりました。」
🔵 講師
「物理・化学は?」
🔴 学習者
「自分には無理だと思っていました。」
🔵 講師
「社会人になってから勉強することについては?」
🔴 学習者
「続けられないと思っていました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「仕事をしながらでも勉強できました。」
🔵 講師
「それは変化ではありませんか?」
🔴 学習者
「確かに。」
🔵 講師
「資格証だけを見ると、一枚の資格かもしれません。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「でも、そこへたどり着くまでに身につけたものがあります。」
学習者は、以前作ったノートを開きました。
そこには、
5分:暗記確認
15分:過去問
30分:問題演習+間違い直し
という記録があります。
さらにページをめくると、
平日はつなぐ
休日は進める
と書かれています。
別のページには、
物理・化学55%
という記録。
その横には、数週間後の、
65%
という数字。
さらにその先には、
70%
という記録が残っています。
🔴 学習者
「結構やってきたんですね。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「合格した瞬間だけ見ると、『資格が一個増えた』だけに感じました。」
🔵 講師
「でも?」
🔴 学習者
「そこまでの過程を見ると、いろいろ変わっています。」
🔵 講師
「では、ここから資格を使っていきましょう。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「前に決めた最初の行動は覚えていますか?」
🔴 学習者
「求人を見ることです。」
🔵 講師
「では、やってみましょう。」
数日後。
学習者は、乙四に関連する求人をいくつか調べてきました。
🔴 学習者
「先生、見てみました。」
🔵 講師
「どうでした?」
🔴 学習者
「思っていたよりいろいろありました。」
🔵 講師
「何が分かりました?」
🔴 学習者
「乙四だけを見ている求人もあれば、別の経験や資格と組み合わせているものもありました。」
🔵 講師
「それを見てどう思いました?」
🔴 学習者
「最初は少しがっかりしました。」
🔵 講師
「なぜ?」
🔴 学習者
「乙四を持っていれば、それだけですごく有利になると思っていたところがあったので。」
🔵 講師
「なるほど。」
🔴 学習者
「求人を見たら、経験が書いてあったり、ほかの条件があったりしました。」
🔵 講師
「それで?」
🔴 学習者
「『乙四だけじゃ足りないのかな』と思いました。」
🔵 講師
「では、資格を取った意味はなかったですか?」
🔴 学習者
「いや、それも違うと思います。」
🔵 講師
「なぜ?」
🔴 学習者
「乙四を取ったから、こういう求人を見るようになったからです。」
🔵 講師
「以前は見ていました?」
🔴 学習者
「全然。」
🔵 講師
「どんな仕事があるか知っていました?」
🔴 学習者
「知りませんでした。」
🔵 講師
「必要な経験や関連資格は?」
🔴 学習者
「それも知りませんでした。」
🔴 学習者
「ああ……。」
🔵 講師
「何か気づきました?」
🔴 学習者
「乙四を取ったことで、次に必要なものが見えるようになったんですね。」
🔵 講師
「そう考えることもできます。」
学習者は求人情報をもう一度見ました。
以前なら、知らない資格名や専門用語が出てくると、そのまま閉じていたかもしれません。
しかし今は違います。
分からない言葉があれば調べます。
仕事内容を読みます。
どのような経験が求められているのか確認します。
そして、自分が今まで経験してきた仕事との共通点を探します。
🔴 学習者
「先生、資格って『これ一個あれば大丈夫』というものじゃないんですね。」
🔵 講師
「資格によりますし、仕事にもよります。」
🔴 学習者
「でも、自分の経験と組み合わせて考えることはできる。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「例えば、自分が今までやってきた仕事の経験。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「そこへ乙四が加わる。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「必要なら、さらに知識や経験を増やす。」
🔵 講師
「そうやって選択肢を広げていきます。」
学習者はノートに、
経験+乙四+次に必要なもの
と書きました。
🔴 学習者
「これなら、資格を一個取って終わりじゃないですね。」
🔵 講師
「逆に、何でも資格を取ればいいという話でもありません。」
🔴 学習者
「必要なものを選ぶ。」
🔵 講師
「そうです。」
🔴 学習者
「求人を見ていたら、知らない資格がいくつか出てきました。」
🔵 講師
「すぐ受けますか?」
🔴 学習者
「前の自分なら申し込んでいたかもしれません。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「まず調べます。」
🔵 講師
「何を調べます?」
🔴 学習者
「その資格がどんな仕事に使えるのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「乙四と組み合わせる意味があるのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「自分がやりたい仕事に必要なのか。」
🔵 講師
「それが大切ですね。」
数日後。
学習者はChatGPTにも相談してみました。
🔴 学習者
「AIにも聞いてみました。」
🔵 講師
「何を聞いたんですか?」
🔴 学習者
「『乙四を取得しました。次に学ぶ分野を考えたいので、関連する仕事や知識の方向性を整理してください』と。」
🔵 講師
「どうでした?」
🔴 学習者
「いろいろ候補が出ました。」
🔵 講師
「全部やります?」
🔴 学習者
「やりません。」
🔵 講師
「なぜ?」
🔴 学習者
「AIは候補を出してくれるけど、自分が何をしたいかまでは決めてくれないからです。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「求人も見て、公式の資格情報も確認して、自分の仕事も考えて決めます。」
🔵 講師
「AIは?」
🔴 学習者
「調べる入口や、考えを整理するために使います。」
🔵 講師
「資格取得後も、AIの使い方は同じですね。」
🔴 学習者
「答えを全部決めてもらうんじゃなくて、自分が考えるために使う。」
資格は「未来を決めるもの」ではなく「未来を選びやすくするもの」
乙四に合格してから三か月ほどが過ぎました。
学習者は以前と同じ仕事を続けていました。
転職もしていません。
収入が急に大きく増えたわけでもありません。
生活そのものは、一見すると資格取得前と大きく変わっていないように見えます。
しかし、学習者のノートには新しいページが増えていました。
乙四を活用できる仕事
現在の経験と組み合わせられること
興味を持った関連分野
今後学んでみたいこと
求人でよく見かけた条件
🔵 講師
「合格して三か月ですね。」
🔴 学習者
「早いですね。」
🔵 講師
「資格を取って、人生は変わりました?」
学習者は少し考えました。
🔴 学習者
「最初に想像していたような変わり方はしていません。」
🔵 講師
「どんな変わり方を想像していました?」
🔴 学習者
「資格を取ったら、すぐ何かいい仕事が見つかったり、給料が上がったり。」
🔵 講師
「実際は?」
🔴 学習者
「そんなに単純じゃなかったです。」
🔵 講師
「では、取っても意味がなかった?」
🔴 学習者
「それは絶対に違います。」
🔵 講師
「なぜですか?」
🔴 学習者
「まず、仕事を見る範囲が広がりました。」
🔵 講師
「以前は?」
🔴 学習者
「自分が今やっている仕事と似たものばかり見ていました。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「乙四をきっかけに、今まで見ていなかった仕事も見るようになりました。」
🔴 学習者
「それと、自分に足りないものも分かってきました。」
🔵 講師
「例えば?」
🔴 学習者
「資格だけじゃなく、経験が必要な仕事もある。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「別の知識があった方がいい場合もある。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「逆に、今までの自分の経験が使えそうな仕事もありました。」
🔵 講師
「資格を取る前には分かっていました?」
🔴 学習者
「分かっていませんでした。」
🔵 講師
「では、選択肢を見るための材料が増えたんですね。」
🔴 学習者
「そうですね。」
学習者は以前書いた、
資格取得後の1年間
というページを開きました。
そこには、
合格直後:乙四を使える仕事を調べる
3か月後:調べた結果から次の行動を一つ決める
とあります。
半年後と1年後の欄は、まだ空白です。
🔵 講師
「3か月たちました。」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「次の行動は決まりました?」
🔴 学習者
「一つ決めました。」
🔵 講師
「何でしょう。」
🔴 学習者
「すぐ転職するのではなく、もう少し仕事について調べながら、関連する知識を勉強してみます。」
🔵 講師
「次の資格ですか?」
🔴 学習者
「それも候補にはあります。」
🔵 講師
「まだ申し込まない?」
🔴 学習者
「はい。資格を取ること自体が目的にならないようにします。」
学習者は、
半年後
の欄に書き込みました。
「仕事の選択肢を調べながら、必要な知識を一つ深める」
そして、
1年後
の欄には少し迷ってから、
「今より一つ多く、選べる道を持つ」
と書きました。
🔵 講師
「転職すると書かなくていいんですか?」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「なぜ?」
🔴 学習者
「一年後に転職するかどうかは、まだ分からないからです。」
🔵 講師
「では何を目指します?」
🔴 学習者
「選べる状態です。」
🔵 講師
「どういうことでしょう。」
🔴 学習者
「今の仕事を続けることもできる。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「別の仕事を調べることもできる。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「必要なら次の資格を取ることもできる。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「その中から、自分で選べる状態になりたいです。」
🔵 講師
「資格が未来を決めてくれるわけではない?」
🔴 学習者
「はい。」
🔵 講師
「では資格は何のために?」
学習者は少し考えました。
🔴 学習者
「未来の選択肢を増やすため、でしょうか。」
🔵 講師
「いいですね。」
🔴 学習者
「乙四を取ったから、この仕事をしなければいけないわけではない。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「乙四を取ったことで、『こういう仕事もある』と知ることができた。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「その中から選ぶのは自分です。」
しばらくして、学習者はふと笑いました。
🔵 講師
「どうしました?」
🔴 学習者
「資格を取る前は、合格したら勉強をやめるつもりだったんです。」
🔵 講師
「そうでしたね。」
🔴 学習者
「もう参考書を開かなくていい、って。」
🔵 講師
「今は?」
🔴 学習者
「少し違います。」
🔴 学習者
「試験のための勉強はいったん終わりました。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「でも、知りたいことが増えました。」
🔵 講師
「例えば?」
🔴 学習者
「乙四の知識が実際の仕事でどう使われているのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「関連する仕事には、どんな知識が必要なのか。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「次に勉強するとしたら、自分には何が必要なのか。」
🔵 講師
「勉強が終わったのではなく、勉強の目的が変わったんですね。」
🔴 学習者
「そうかもしれません。」
学習者は乙四の勉強に使っていたノートをめくりました。
最初のページには、まだ不安そうな文字で、
「試験に合格する」
と書かれています。
そのころの学習者にとって、それが唯一のゴールでした。
しかし今、その横に新しい言葉を書き加えます。
「合格した資格を、自分の未来にどうつなげるか考える」
🔴 学習者
「先生、資格って不思議ですね。」
🔵 講師
「何がですか?」
🔴 学習者
「取る前は、資格そのものがすごく大きく見えていました。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「取ったら全部変わるような気がしていました。」
🔵 講師
「実際に取ってみると?」
🔴 学習者
「資格は、きっかけなんだと思います。」
🔵 講師
「きっかけ?」
🔴 学習者
「資格を取っただけで、自動的に未来が決まるわけじゃない。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「でも、それまで知らなかった仕事を知ったり、自分の可能性を考えたりするきっかけになる。」
🔵 講師
「そうですね。」
🔴 学習者
「それに、自分が一つ資格を取れたという事実は残ります。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「仕事をしながら勉強した。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「分からないところを何度もやり直した。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「途中で勉強できない日があっても戻った。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「最後まで続けて、試験を受けて、合格した。」
学習者は、自分で言いながら少しうれしそうな表情になりました。
🔴 学習者
「これって、次に何か始めるときにも使えますね。」
🔵 講師
「資格勉強で得た経験は残ります。」
🔴 学習者
「次に何か勉強するとき、『自分には無理』とは前ほど思わない気がします。」
🔵 講師
「なぜでしょう。」
🔴 学習者
「一回できたからです。」
🔵 講師
「では、資格取得で得た一番大きなものは何でしょう。」
🔴 学習者
「まだ分かりません。」
🔵 講師
「資格証ではない?」
🔴 学習者
「資格証も大事です。」
学習者は少し考えました。
🔴 学習者
「でも、それだけじゃないと思います。」
🔴 学習者
「自分でも、新しいことを学べると分かったこと。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「必要なら、また勉強できると思えること。」
🔵 講師
「はい。」
🔴 学習者
「そして、今まで知らなかった選択肢を見られるようになったこと。」
学習者は、ノートの最後のページに書きました。
資格は未来を決めてくれるものではない。
資格は、未来を選ぶための選択肢を増やしてくれる。
そして、その下にもう一行。
大切なのは、資格を取ったあと、自分が次に何をするか。
学習者はペンを置きました。
資格取得前には、合格の先に何があるのか分かりませんでした。
しかし今は、すべてが決まっているわけではないからこそ、自分で考え、調べ、選んでいけばいいのだと分かっています。
乙四という一つの資格を手にしたことで、未来が一つに決まったのではありません。
むしろ、
これまで見えていなかった未来を、自分で選ぶための入口が一つ増えたのです。
理論編はこちらから
⑱ 資格取得後の未来を考える(理論編)
資格試験の勉強をしていると、どうしても「合格すること」ばかりを考えるようになります。 過去問で何点取れたか。 苦手分野を克服できたか。 試験まであと何日あるか。 合格ラインへ届いているか。 もちろん、試験を受ける以上、合 […]
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